ヒューズ用語のいろいろな表現

ヒューズの用語には,場面によって呼びかたが変わったり,各メーカごとによく使う表現が違ったり,安全規格などによっても呼びかたが違っていることがあります.ここでは,そのようなヒューズの用語の一例を紹介します.[ ]内が同義語です.

● 溶断

「溶断する」ことを「切れる」と表現することがある.ヒューズに過電流が流れることで,ヒューズ・エレメントが溶けて切れること.

● 動作

過電流の流れ始め→ヒューズ・エレメントが溶断し→アークが発生し→アークが消滅(消弧)するまでの一連のヒューズの働き.

● ヒューズ・エレメント

[可溶体,ヒューズ線,線エレメント,ヒューズ膜,箔エレメント]過電流が流れることで,自身の発熱で溶断するように作られたヒューズの可溶部分.

● 定格電圧

規定の条件下で使用できる電圧.または,上記の遮断容量の試験条件に関連して,メーカが決めた電圧.

● 定格電流

規定の条件下で通電できる電流.または,溶断時間などの要求に合うようにメーカが決めた電流.長時間流し続けられる電流は,さらにこの値に温度によるディレーティングを考慮する必要がある.

● 溶断電流

ある溶断時間でヒューズ・エレメントが溶断する固有電流.ヒューズを確実に動作させるには,溶断電流以上で,規定のマージンを取った値以上の電流が流れる必要がある.

● 固有電流

回路中のヒューズを無視できる程度に小さいインピーダンスの導体に置き換えたときに回路に流れる電流.

● 遮断電流

ヒューズの遮断動作中に発弧瞬時(アークが発生するまさにその瞬間)に流れる電流.

● 遮断容量

[定格遮断電流,遮断電流]定格電圧と合わせて,遮断特性とするメーカもある.規格や基準などに規定される試験条件で,ヒューズが安全に遮断することができる固有電流の上限値(交流では実効値).試験はヒューズの定格電圧の定数倍(例:1 ~ 1.05 倍)の電圧の回路で実施される.ヒューズを安全に動作させるためには,遮断の瞬間にヒューズに印加される電圧は定格電圧以下で,かつヒューズに流れる電流は遮断容量以下の状態である必要がある.

● 通電容量

規定の条件の下でヒューズに通電したときに規定の時間内にヒューズが溶断しないことを保証された電流値.例えば,常温環境で定格電流を通電して1時間溶断しないこと,など.

● 定常電流

定常的に通電しても溶断しない電流.

● 異常電流

[過電流,過負荷電流]機器の事故や故障などによって,回路に流れる過電流.これこそが,ヒューズを使用して遮断したい主たる対象である.

● 突入電流

始動電流,パルス電流,サージ電流,起動電流,突入パルス,ラッシュ電流,インラッシュ・カレント,過渡電流.サージ電流,起動電流,突入電流,ラッシュ電流,過渡電流などを含めた,瞬間的に定格電流よりも遥かに大きなピークの電流が短時間流れる現象.定常電流に繰り返し重畳されるものも含む.

● 溶断特性

It特性,溶断時間-電流特性,溶断カーブ,It カーブ]溶断時間と溶断電流の関係を表す曲線.
一定の電流に対する溶断時間の平均値から作成するものであり,ヒューズの特性を保証するものではない.メーカや各規格によって,縦軸と横軸が入れ替わっていることがあるが,本質は変わらない.

i2tt 特性

i2tt カーブ,ジュール積分特性,i2t -時間特性,溶断i2t 値]ジュール積分値と溶断時間の関係を表
す曲線.溶断特性から一意に求まり,実質的には同じデータである.突入電流への耐性を評価する際に負荷率を計算するのに適した形である.

● ジュール積分(値)

i2t(値)]与えられた時間にわたって,電流の2乗の値を積分したもの.ヒューズに流れる電流を時間の関数it)としたとき,it)の2乗を時間tで時刻tt0 からtt1 まで定積分した値.単位は[A2s].
矩形波の場合は,電流値i ,時間t とすると,i2t [A2s]になる.

● ジュール積分値の負荷率

単に負荷率と表すこともあるが,電流の負荷率(電流値÷ 定格電流値)と混同しないよう注意が必要である.ヒューズのi2tt 特性と突入電流のジュール積分値を比較して,ある時間での「突入電流のジュール積分値÷ ヒューズのジュール積分値」の値のことを指す.

● パルス耐量係数

[耐パルス特性図]ヒューズのi2tt特性に対して,ある負荷率になる突入電流に何回耐えられるか,目安の回数をプロットしたものである.メーカによって,耐回数の実力値を示している場合もあれば,ある程度マージンを取った値を示している場合もあり,注意が必要である.いずれにしても参考値であり,ヒューズの特性を保証するものではない.

● 溶断時間

溶断電流が流れ始めた瞬間から,ヒューズ・エレメントが溶断してアークが発生するまでの時間.

● アーク時間

[アーク持続時間]ヒューズ・エレメントが溶断して,アークが発生した瞬間から,アークが消滅(消弧)するまでの時間.

● 動作時間

ヒューズの動作の時間.すなわち,溶断時間とアーク時間の和.

バーチャル時間

ジュール積分(i2t)値を固有電流の2乗で除した値.

● 回復電圧

電流遮断後にヒューズの端子間に現れる電圧.

● タイムラグ溶断(型)

[タイムラグ型,タイム・ディレイ型,遅延型]溶断特性における傾斜の大きさについて比較する用語である.傾斜が小さいほどタイムラグ溶断になり,傾斜が大きいほど速断になる.ただし,各規格や基準などにより基準が異なるため,異なるメーカや製品間での比較は,溶断特性を参照する必要がある.

〈高藤裕介〉

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