突入電流に対する耐回数の求めかたの実例と注意点

図E 突入電流の瞬時値のイメージ

本稿では,突入電流耐回数の求めかたを具体的な数値を用いた実例で示します.また,その際に気をつけなければいけない注意点も併せて紹介します.

● 手順① 突入電流を測定する

突入電流を,電流プローブを用いてディジタル・オシロスコープで記録します.使用する電流プローブは,直流にも対応できるホール素子タイプのものが適しているでしょう.

【注意1】

回路に直列抵抗を挿入して,抵抗の両端電圧からオームの法則で電流値を求めることもできますが,その際は回路の電流が小さくならないように十分に小さな抵抗値である必要があります(ヒューズの内部抵抗よりも1桁以上小さいことが望ましい).
当然,測定される抵抗両端電圧も小さな値になりますので,測定値の誤差は大きくなってしまいます.
また,抵抗器の発熱によって抵抗値が変化した場合,オームの法則で電流を正確に求められなくなる可能性もあります.

● 手順② 突入電流の開始から各時刻までのジュール積分値を算出する

突入電流値のディジタル・データから,コンピュータを用いて,突入電流の開始(ゼロ秒)から各時刻までのジュール積分値(I2t値)を算出します.
図DにExcelを用いた計算例を示します.
① A 列には測定した突入電流データの時刻(時間),B列には電流値が入っています.
② C 列で突入電流の瞬時値の2 乗に直前の時刻との差分の値を乗じた値(瞬時のI2t値)を計算させます.図中の数式を参照してください.
③ D 列で,②で計算した瞬時のI2t値の累積値を計算させます.
突入電流の瞬時値のイメージを図Eに示します。

● 手順③ ヒューズの製品固有のジュール積分特性に対する負荷率を算出する

手順2 で計算した突入電流の「時刻(時間)-累積のI2t値」をヒューズ製品固有のジュール積分特性図にプロットします(図F).
図F の例では,5 ms のときにヒューズのジュール積分特性カーブと突入電流のジュール積分値が最接近し,負荷率が最大になります.負荷率は20 %と求まります.

【注意2】

ヒューズのジュール積分特性と耐パルス特性は,ヒューズの製品ごとに異なります.

【注意3】

突入電流の評価は,ヒューズ・エレメントからの放熱による影響が無視できるほど小さい領域,すなわちヒューズの溶断時間が短い領域でのみ有効です(おおむね数ミリ秒,大きくても0.1 秒以下の領域).目安としては,ヒューズのジュール積分特性カーブが水平に近い領域です(図F の【(b)付近).
それ以上の時間領域については,各メーカへ問い合わせることをお勧めします.
突入電流に対する耐回数の求めかたの実例と注意点 3

図D Excelを用いた突入電流のジュール積分値の計算例

図E 突入電流の瞬時値のイメージ

図F 負荷率の算出方法
「時刻(時間)-累積のI2t値」をヒューズ製品固有のジュール積分特性図にプロットし,ヒューズのジュール積分特性カーブと突入電流のジュール積分値が最接近するところの負荷率(突入電流のジュール積分値÷ ヒューズのジュール積分値)を読み取る

● 手順④ ヒューズの製品固有の耐パルス特性図から耐回数を読み取る

図Gのヒューズ製品の耐パルス特性図より,手順3 で求めた負荷率20 %での耐回数を読み取ります.
このヒューズ製品の耐パルス特性の場合,約10万回の耐性があることがわかります.

【注意4】

メーカによって,耐回数の実力値を示している場合もあれば,ある程度マージンを取った値を示している場合もあり,注意が必要です.

【注意5】

耐回数は参考値であり,ヒューズの特性を保証するものではありません.

〈高藤 裕介〉

図G 耐パルス特性図から耐回数を読み取る
この例の場合,負荷率20 %での耐回数を読み取ると約10万回の耐性があることがわかる

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